2026シーズンの浦和レッズは、開幕からの4試合で2勝1分1敗。アウェイ3連戦を勝点7で乗り切るなど、結果だけを見ればまずまずのスタートと言えるだろう。しかしピッチ上で見えてきたのは、単なる「順調な立ち上がり」ではなく、昨季とは明確に異なる戦い方だった。
守備ラインを高く設定し、前線から積極的にプレスを仕掛ける新たな守備アプローチ。松尾と肥田野の2トップが繰り返すラインブレイクによって生まれるスペース。そして押し込んだ状態からの素早いネガティブトランジション。浦和は守備面を軸に、試合の主導権を握ろうとする意図が見える。
一方で、攻撃面にはまだ整理されていない部分も残る。ビルドアップが停滞した際のロングボール、サヴィオの個人技に依存する局面、そして組織的な崩しの不足。開幕4試合は、チームの進化と同時に課題も浮かび上がる期間となった。
本稿では、開幕4試合の内容とデータをもとに、2026年シーズン序盤の浦和レッズの戦術と現在地を整理していく。
| 節 | 対戦 | 結果 |
|---|---|---|
| 1節 | 千葉 | ○ 2-0 |
| 2節 | FC東京 | △ 1-1 |
| 3節 | 横浜FM | ○ 2-0 |
| 4節 | 鹿島 | ● 2-3 |
開幕4試合で見えた浦和レッズの変化
開幕アウェイ3連戦で勝点7のスタート
2026シーズンの浦和レッズは、開幕からアウェイ3連戦という難しい日程でスタートした。第1節の千葉戦で勝利を収めると、第2節のFC東京戦では引き分け、第3節の横浜FM戦では再び勝利。アウェイ3試合で勝点7を積み上げ、結果面では上々の立ち上がりとなった。序盤戦としては安定した戦績であり、チームとして一定の完成度を示したと言える。
昨季より高くなった守備ライン
今季の浦和でまず目につくのは、守備ラインの設定が昨季よりも明確に高くなっている点だ。最終ラインを押し上げることでコンパクトな陣形を維持し、前線からのプレスと連動して相手のビルドアップを制限する狙いが見える。結果として相手を自陣に押し込む時間も増え、試合の主導権を握る場面が多く見られた。守備から主導権を握るというチームの意図は、開幕からの数試合でもはっきりと表れている。
宮本加入で強化されたハイラインと守備強度
この守備アプローチを支えている要因の一つが、宮本の加入による守備強度の向上だ。宮本が行う守備ラインのコントロールにより、守備陣形がコンパクトになりプレスが機能することが増えた。高い位置でのボール回収が増えたことで、相手陣内でのプレー時間も増加。守備から攻撃への移行、いわゆるネガティブトランジションの質も高まり、チーム全体として守備の連動性が強まっている印象だ。
前線プレスと即時奪回 ― 守備から主導権を握る設計
松尾・肥田野を起点とした前線プレス
今季の浦和の守備は、前線からの積極的なプレスを起点としている。その中心にいるのが2トップの松尾と肥田野だ。相手のビルドアップが始まる段階でプレッシャーをかけ、パスコースを限定しながらボールの前進を制限する役割を担う。2人のアクションを合図に中盤と最終ラインも押し上げることで、チーム全体としてコンパクトな守備ブロックを形成している。
高い守備ラインで相手を押し込む
前線のプレスと連動する形で、最終ラインの設定も昨季より高くなっている。ディフェンスラインを押し上げることでピッチをコンパクトに保ち、相手に自由な前進を許さない構造だ。この高いライン設定によって中盤の守備エリアも前方に押し出され、ボール奪取の位置が高くなる場面が増えている。結果として相手を自陣に押し込む時間帯が生まれ、浦和が試合の主導権を握る展開につながっている。
押し込んだ状態でのネガティブトランジション
さらに特徴的なのが、ボールを失った直後のネガティブトランジションの速さだ。攻撃から守備へと切り替わる瞬間に、近い位置の選手が即座にプレッシャーをかけてボールの回収を狙う。押し込んだ状態を維持するための意識がチーム全体で共有されており、相手にカウンターの時間とスペースを与えない場面が多く見られた。こうした即時奪回の姿勢が、浦和の守備をより攻撃的なものにしている。
ラインブレイクが生む攻撃 ― 2トップが作るスペース
松尾と肥田野のラインブレイク
今季の浦和の攻撃で特徴的なのは、松尾と肥田野の2トップが繰り返すラインブレイクだ。相手ディフェンスラインの背後を狙う動きを継続的に行うことで、最終ラインに常にプレッシャーを与えている。単に裏を狙うだけではなく、タイミングを変えながらライン間へ落ちる動きも織り交ぜることで、相手センターバックの判断を難しくしている。こうした前線の動きが、浦和の攻撃の起点となっている。
DFラインを下げて生まれるライン間スペース
2トップのラインブレイクが繰り返されることで、相手の最終ラインは背後を警戒して下がらざるを得なくなる。その結果、ディフェンスラインと中盤の間、いわゆるバイタルエリアにスペースが生まれる。浦和はこのライン間のスペースを利用することで前進のルートを確保している。前線の動きによって相手守備ブロックを引き伸ばし、その隙間を突くという構造が見て取れる。
縦パスと背後への配球で前進するビルドアップ
ビルドアップの局面でも、浦和は縦方向への意識が強い。中盤や最終ラインからライン間へ差し込む縦パス、あるいはサイドの背後へ送る配球によって一気に前進を狙う場面が多く見られた。2トップの動きと連動することで、相手守備ラインの裏とライン間の両方を同時に攻略しようとする意図がうかがえる。こうした縦方向の推進力が、浦和の攻撃を前進させる重要な要素となっている。
データから見る浦和の特徴
| 指標 | 数値 | リーグ順位 | ポイント |
|---|---|---|---|
| 得点 | 1.75 / 試合 | 4位 | 決定力は上位 |
| xG | 1.656 | — | 得点とほぼ一致 |
| シュート数 | 12.8 | 11位 | チャンス数は平均的 |
| シュート成功率 | 13.7% | 5位 | 高い決定率 |
| 失点 | 1.00 | 6位 | 比較的安定 |
| 被シュート数 | 14.3 | 14位 | 守備回数は多い |
| 被シュート成功率 | 7.0% | 5位 | 最終局面で踏ん張る |
少ないチャンスを仕留める高い決定率
データ面から浦和の序盤戦を見ていくと、まず目立つのが決定率の高さだ。Football LABのデータでは、1試合平均シュート数はリーグ中位にとどまる一方、シュート成功率は上位に位置している。つまり、決して多くのチャンスを作っているわけではないが、限られた機会を得点につなげている構図だ。
期待得点(xG)も実際の得点数と大きく乖離しておらず、極端な上振れではない。チャンスの数よりも質、そして決定力によって得点を重ねているのが今季序盤の浦和の特徴と言える。
押し込まれながらも失点を抑える守備
一方で守備のデータを見ると、試合の流れとは少し異なる側面も見えてくる。被攻撃回数や被シュート数はリーグ平均より多く、守備の回数自体は決して少なくない。それでも失点数は抑えられており、被シュート成功率も比較的低い数値に収まっている。
この点からは、守備ブロックの粘りやGKを含めた最終局面での対応力が機能していることがうかがえる。ただし、被期待得点(被xG)と実際の失点の差を見ると、やや失点が抑えられている側面もあり、今後の試合ではこの数字が収束していく可能性もある。
セットプレー失点の多さ
| 失点パターン | 失点 | 割合 |
|---|---|---|
| PK | 1 | 25% |
| セットプレー | 2 | 50% |
| クロス | 1 | 25% |
序盤戦で特に目立つ課題がセットプレーからの失点だ。Football LABの失点パターンを見ると、4試合で喫した失点の半数がセットプレー由来となっている。流れの中での守備は一定の安定感を見せている一方で、コーナーキックなどの局面ではマークの受け渡しやボールへの対応に課題が残る。
第4節の鹿島戦でもCKから失点を喫しており、データと試合内容の双方から同じ傾向が確認できる。シーズンを通して上位争いを目指すのであれば、このセットプレー守備の改善は重要なポイントになりそうだ。
個人依存が残る攻撃 ― ビルドアップと崩しの課題
ビルドアップ停滞時のロングボール
浦和のビルドアップは、縦パスや背後への配球を意識した前進の形が見られる一方で、相手の守備に捕まった際の選択肢が整理されていない場面も少なくない。ビルドアップが停滞すると、意図のはっきりしないロングボールが選択される場面が散見される。こうしたボールは相手に回収されるケースも多く、結果として自ら試合の流れを手放してしまう要因になっている。
サヴィオの個人技に依存する攻撃
攻撃の局面では、サヴィオの個人技に頼る場面が目立つ。ライン間でボールを受けた際の突破やミドルパスは浦和にとって有効な武器である一方、攻撃の出口がサヴィオ中心になりやすい傾向も見られる。チームとしての崩しの形が十分に確立されていないため、最終局面では個人の打開力に依存する構図が生まれている。
左右に揺さぶる崩しの不足
相手守備を崩す上で重要となる横方向の揺さぶりは、現時点ではそれほど多く見られない。サイドチェンジやボール循環によって守備ブロックを動かすというよりも、縦方向の突破や個人技によって局面を打開する場面が中心となっている。結果として、相手守備に対して組織的にスペースを作り出すプロセスが不足している印象だ。
中盤奪取後の攻撃設計
守備面では前線プレスや即時奪回が機能しているものの、中盤でボールを奪った後の攻撃の設計はまだ整理されていない。ボール奪取後の判断が選手個々のアドリブに委ねられる場面も多く、チームとしてどこを狙うのかが明確でないケースも見られる。高い位置でのボール奪取をより得点機会につなげるためには、このトランジション局面の整理が求められる。
セットプレー守備
戦術的な課題としてもう一つ挙げられるのが、セットプレー守備の安定性だ。流れの中での守備は一定の機能を見せているが、コーナーキックやフリーキックといった局面では失点を許す場面が見られる。序盤戦のデータでもセットプレーからの失点割合が高く、この点はチームとして改善が必要なポイントと言える。
まとめ ― 進化した守備と、岐路に立つ攻撃
開幕4試合を終えた浦和レッズは、2勝1分1敗。アウェイ3連戦で勝点7を積み上げるなど、結果面では上々のスタートと言えるだろう。ピッチ上でも、昨季からの変化ははっきりと見えている。守備ラインを押し上げたハイライン、松尾と肥田野を起点としたラインブレイクと前線プレス、そしてボールロスト直後の即時奪回。守備面ではチームとしての連動性が高まり、より攻撃的な守備が機能し始めている印象だ。
一方で、攻撃面にはまだ整理されていない部分が残る。ビルドアップが停滞した際のロングボール、サヴィオの個人技に依存する局面、そして左右に揺さぶる組織的な崩しの不足。データ面でも、シュート数は平均的である一方で決定率の高さによって得点を重ねている構図が見え、チームとして安定してチャンスを生み出しているとは言い難い。守備の進化とは対照的に、攻撃の構造はまだ発展途上にあると言えるだろう。
今回の百年構想リーグは、マチェイ・スコルジャ監督の進退にも関わるシーズンになる可能性がある。個人的には守備面は確実にバージョンアップしたと感じる一方で、攻撃面は現状のアプローチを継続するだけでは大きな変化は見込みにくいのではないかという印象もある。
近年のJリーグでは、強度の高い守備をベースに攻撃回数を増やすスタイルが結果を残しており、ハイプレスからのショートカウンターを軸とするチームが主流になりつつある。スコルジャの戦術もハイプレスを志向しているが、基本的にはボール保持を重視する設計でもあり、戦術的にどちらへ振り切るのかがやや曖昧なままになっていることが、攻撃の停滞につながっている可能性もある。
個人的には、欧州で広がりつつある「疑似カウンター」に近いアプローチが、現在の浦和の選手構成には合うのではないかとも感じる。相手のハイプレスを回避するビルドアップの構造を整えつつ、奪取後は素早く前進する攻撃へ移行するスタイルだ。中盤から前線にかけては個の能力に優れた選手が揃っているだけに、そのタレントを生かす形の戦術が見られれば、チームの攻撃力はさらに引き上げられる可能性がある。
守備面の進化は確かに見えている。だからこそ、攻撃面でどのような方向性を打ち出すのか。開幕4試合は、浦和レッズの現在地とともに、今後の戦い方を占う材料を示した期間だったと言えるだろう。
参考資料・出典
公式データベース
- Football LAB(フットボール分析データベース)
- シーズンスタッツ、フォーメーション分析、選手ランキング
- J1リーグ公式
- 試合結果、最終順位、受賞者
戦術分析メディア
- フットボリスタ(戦術専門誌)
- Football Tribe(サッカー専門媒体)
- サッカー批評Web(戦術解説)

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